俵屋宗達についての史料は少なく、その生涯は謎に包まれている。宗達が率いた工房は、扇絵や草花を描いた屏風を手がけ、朱色で円形の「伊年」印を押していたことが知られる。この印は、宗達の生前に工房で作られた数点の作品に見られ、宗達本人や弟子たちが使用したと考えられる。1643年頃に宗達が世を去ると、弟子たちは以前にも増して多くの作品に「伊年」印を押すようになったともいう。その多くは草花を描いた絵であり、当時、植物学や調査・分類への関心が非常に高まっていたことを物語っている。苗木や植物、切り花を、贈り物に使う人も多かったのだろう。「伊年」印を用いた宗達派の画家たちは、植物をテーマにした絵の注文制作を数多く行った。