江戸時代の絵画には、画家の署名がなく、作者が推定できないものも多い。当時の日本語には、「芸術」や「芸術家」といった言葉はまだなく、現在では芸術作品として美術館に展示されているものの多くは、本来、日々の暮らしで使う調度品だった。例えば屏風は、美しく優雅な絵で客間を華やかに彩るとともに、部屋の間仕切りとしての実用性も備えていた。おそらく画家の多くは、自分の作品に誇りを持ちながらも、絵画制作はあくまで個人の自由な表現ではなく注文主のためであり、自らを職人と考えていたため、署名を控えたのだろう。