日本の国土の大半は、温暖な気候と豊かな雨、そして四季の変化に恵まれ、そのおかげで多彩で美しい自然風景が織りなされている。その一方で、100以上の火山を有し、4つの地殻プレートの上に位置する島国であるため、大地震や、それに伴う火災や津波といった災害は、常に身近な脅威だ。日本人は古来、自然の壮麗さと猛々しさの両面を神々の力の現われと見なし、儀式や詩歌、芸術作品の中で畏敬を込めて表現してきた。
江戸時代の画家たちもその伝統を継いで自然の神秘を敬い、大型の屏風や長尺の掛軸といった壮大な表現空間に絵筆をふるって、見る者を魅了し畏敬の念を抱かせる絵画を生み出した。各作品の細部に目を凝らすと、さまざまな自然風景と出会える。例えば、人の指先を思わせる形状の波しぶきが空に舞い上がり、金色に輝く小さな露の玉が草の上に散らばり、龍が雲をつんざいて空を自由に飛ぶ。花びらや木の葉の緻密な描写や、霧に包まれた森の謎めいた風景にも目を奪われる。いずれも精緻で壮麗な美しさを湛え、私たちを魅了するとともに、自然の計り知れない力を知らしめる。